ファームウェア取り扱いガイド
このガイドについて
このページでは、キーボードにファームウェアを書き込むときの基本的な考え方を説明します。
対象は、UF2 ファイルを書き込むタイプのキーボードです。ZMK系の無線キーボードでよく使う手順です。
「どのファイルを書けばいいのか分からない」「左右で別のファイルがある」「モジュールを変えたらどれを選ぶのか分からない」という人向けに、なるべく順番に確認できるようにしています。
まず覚えること
ファームウェアは、キーボードを動かすための中身です。
キーボード本体に入れることで、キー入力、トラックボール、ロータリーエンコーダ、OLED、BLE接続などの動きが決まります。
書き込みに使うファイルは、多くの場合 .uf2 という拡張子です。
例:
Polaris_L_MODULE_ENC.uf2
Polaris_R_MODULE_TB.uf2
settings_reset-seeeduino_xiao_ble.uf2
UF2 は、特別な書き込みソフトを使わずに、USBメモリへファイルをコピーするような感覚で書き込める形式です。
UF2を書き込む流れ
基本の流れは次の通りです。
- キーボードをUSBケーブルでPCに接続する
- キーボードをブートローダーモードにする
- PCに表示されたドライブを開く
- 対応する
.uf2ファイルをコピーする - コピーが終わると自動で再起動する
ブートローダーモードに入ると、PC上に新しいドライブが表示されます。
ドライブ名は使用しているマイコンによって異なります。たとえば XIAO-SENSE, Seeed XIAO のような名前で表示されることがあります。
このガイドで想定しているマイコンでは、リセットボタンを2回押すことでファームウェア書き込みモードに入ります。
ブートローダーモードに入る方法
キーボードによって方法は少し違いますが、よく使う方法は次のどれかです。
リセットボタンを2回押す
多くのマイコンでは、リセットボタンを素早く2回押すとブートローダーモードに入ります。
押す間隔が遅すぎると通常の再起動になることがあります。うまくいかない場合は、少し速めに2回押してください。
ファームウェア書き込みモードに入ると、PCにドライブが表示されます。そのドライブを開いて、書き込みたい .uf2 ファイルをドラッグアンドドロップでコピーします。
キー操作でリセットする
すでにファームウェアが入っている場合、キーマップに Reset や Bootloader が設定されていれば、キー操作でブートローダーモードに入れることがあります。
ただし初回書き込みや、ファームウェアが壊れている場合は、この方法は使えません。
UF2を書き込む
ブートローダーモードに入ると、PCにドライブが表示されます。
そのドライブへ .uf2 ファイルをコピーします。
コピー中にドライブが消えることがありますが、これは正常です。コピーが完了するとマイコンが自動で再起動します。
OSから見ると、ドライブが勝手に切断されたように見えるため、エラーダイアログや警告が出ることがあります。
これは書き込み完了後にマイコンが自動で切断・再起動しているためです。UF2をコピーした直後にドライブが消えた場合は、基本的には正常な動作です。
書き込み後にドライブが消えて、キーボードとして動き始めれば成功です。
書き込みに成功すると、マイコンのランプが青や赤に光るはずです。ランプが光るかどうかも、書き込み後の確認ポイントになります。
ファームウェアファイルの選び方
ここが一番間違いやすいところです。
ファームウェアは「キーボード本体の種類」「左右」「取り付けているモジュール」に合わせて選びます。
ファイル名だけで判断しにくい場合は、次の順番で確認してください。
1. キーボード名を見る
まず、自分のキーボード名が入っているファイルを選びます。
たとえば SparAkasha 用のキーボードに、Geacon 用のファイルを書き込まないでください。
違うキーボード用のファームウェアを書き込むと、キーの位置、配線、センサー設定が合わず、正しく動かないことがあります。
2. 左右を確認する
分割キーボードでは、左手側と右手側で別々のファイルを使うことがあります。
よくある名前:
Polaris_L_MODULE_ENC.uf2
Polaris_R_MODULE_TB.uf2
Polaris_L〜 は左手側、Polaris_R〜 は右手側です。
ZMKでは、片方が親機、もう片方が子機として動く構成があります。ファイル名に central や peripheral が入っている場合は、ビルド元の説明に従ってください。
迷った場合は、配布ページやREADMEで「左に書くファイル」「右に書くファイル」を確認してください。
3. モジュールの種類を確認する
モジュール式キーボードでは、取り付けているモジュールによって使うファームウェアが変わることがあります。
モジュールが違うファームウェアを書き込むと、キー入力はできても、ポインターやエンコーダが動かないことがあります。
たとえば Polaris_R_MODULE_TB.uf2 は、Polarisの右手側で、トラックボールモジュールを使うためのファームウェアです。
このファイル名は次のように読みます。
Polaris: キーボード名R: 右手側MODULE: モジュール対応TB: トラックボール
右手側にトラックボールモジュールを取り付けている場合は、このような R と TB が入ったファイルを選びます。
左右とモジュールの略称は、次のように読むと判断しやすいです。
| 表記 | 意味 | 選ぶ場面 |
|---|---|---|
L | 左手用 | 左手側の基板に書き込む |
R | 右手用 | 右手側の基板に書き込む |
ENC | エンコーダーモジュール用 | ロータリーエンコーダーモジュールを使う |
TB | トラボ用 | トラックボールモジュールを使う |
JOY | アナログスティック&エンコーダーモジュール用 | アナログスティックとエンコーダーのモジュールを使う |
TPD | トラパ用 | トラックパッドモジュールを使う |
たとえば、右手側にトラックボールを付ける場合は R と TB が入ったファイルを選びます。
左手側にエンコーダーモジュールを付ける場合は L と ENC が入ったファイルを選びます。
左手側にアナログスティック&エンコーダーモジュールを付ける場合は L と JOY が入ったファイルを選びます。
右手側にトラックパッドモジュールを付ける場合は R と TPD が入ったファイルを選びます。
4. 書き込み前のチェックリスト
書き込む前に、次の項目を確認してください。
- キーボード名は合っているか
- 左右のファイルを間違えていないか
- マイコンの種類は合っているか
- 取り付けているモジュールに対応しているか
- 古いファームウェアではなく、最新の配布ファイルか
ひとつでも不安がある場合は、無理に書き込まず、ファイル名や配布元の説明を確認してください。
よくある失敗
ドライブが表示されない
USBケーブルが充電専用の可能性があります。
データ通信に対応したUSBケーブルを使ってください。
また、USBハブ経由だとうまく認識しないことがあります。PC本体のUSBポートに直接接続して試してください。
UF2をコピーしても動かない
ファイルの種類が違っている可能性があります。
キーボード名、左右、モジュール、マイコンの種類をもう一度確認してください。
まず、ランプが青や赤に光っているか確認してください。
ランプが光っていれば、少なくとも書き込み自体は進んでいる可能性があります。
左右の片方だけ動かない
分割キーボードでは、左右それぞれに正しいファームウェアが必要です。
左用を右に、右用を左に書き込んでいないか確認してください。
無線キーボードの場合は、左右のペアリング情報が残っていて動かないこともあります。配布元にリセット用UF2やペアリング削除手順がある場合は、それに従ってください。
無線接続がうまくいかない
無線接続がうまくいかない場合は、PC側とキーボード側の接続情報がずれている可能性があります。
この場合は、PC側の接続情報と、キーボード側に残っている設定を一度消してから、ファームウェアを書き直して再ペアリングします。
基本の流れは次の通りです。
- PC側のBluetooth設定から、対象キーボードの接続情報を削除する
- 左手側に
settings_resetのUF2を書き込む - 右手側に
settings_resetのUF2を書き込む - 左手側に左手用ファームウェアを書き込む
- 右手側に右手用ファームウェアを書き込む
- PCとキーボードをもう一度ペアリングする
settings_reset は、キーボード側に残っている接続情報や設定を消すためのファームウェアです。
左右の両方に settings_reset を書き込むのが重要です。片側だけリセットすると、もう片方に古い接続情報が残って、うまくつながらないことがあります。
settings_reset を書き込んだあとは、そのままではキーボードとして使えません。必ず通常のファームウェアを書き直してください。
右手側には、Polaris_R_MODULE_TB.uf2 のように R が付いた右手用ファイルを書き込みます。
左手側には、使用している構成に合った左手用ファイルを書き込みます。ファイル名に L が入っている場合は左手用です。
最後にPC側でBluetoothペアリングをやり直します。PC側に古い接続情報が残っていると再接続に失敗しやすいため、最初に削除してからやり直してください。
モジュールだけ動かない
キー入力はできるのに、トラックボールやエンコーダだけ動かない場合は、モジュール非対応のファームウェアを書いている可能性があります。
取り付けたモジュール名が入っているファイルを探してください。
「動かない」と言うときは、どこが動かないのかを分けて確認すると原因を見つけやすいです。
- キー入力もできない
- キー入力はできるが、トラックボールが動かない
- キー入力はできるが、エンコーダが動かない
- 片手側だけ動かない
- USB接続では動くが、無線接続では動かない
キー入力もできない場合と、モジュールだけ動かない場合では、疑う場所が変わります。
キー入力もできない場合は、左右やキーボード名、マイコンの種類が違っている可能性があります。
キー入力はできるがモジュールだけ動かない場合は、モジュール対応ファームウェアではない、またはモジュールの接続が正しくない可能性があります。
書き込みをやり直すとき
ファームウェアは、何度でも書き込み直せます。
間違えたファイルを書いてしまっても、もう一度ブートローダーモードに入れて、正しい .uf2 をコピーすれば大丈夫です。
ただし、書き込み中にUSBケーブルを抜かないでください。
コピー中に中断すると、再度ブートローダーモードに入れる必要があります。
初心者向けの安全な進め方
初めて書き込む場合は、次の順番で進めるのがおすすめです。
- まず標準構成のファームウェアを書き込む
- キーボードとして入力できるか確認する
- 左右がある場合は両方確認する
- モジュール対応ファームウェアを書き込む
- トラックボール、エンコーダ、OLEDなどを確認する
いきなり複雑な構成のファームウェアを書き込むより、まず標準構成で動作確認した方が原因を切り分けやすくなります。
困ったときに確認する情報
質問や問い合わせをするときは、次の情報があると状況を伝えやすくなります。
- キーボード名
- マイコンの種類
- 書き込んだUF2ファイル名
- 左右どちらに書き込んだか
- 取り付けているモジュール
- どこまで動いて、どこが動かないか
- PCにドライブが表示されるか
「動きません」だけだと原因を絞りにくいです。ファイル名と構成を一緒に確認すると、かなり解決しやすくなります。
まとめ
UF2の書き込み自体は、ドライブにファイルをコピーするだけです。
難しいのは、正しいファイルを選ぶことです。
ファイルを選ぶときは、次の順番で確認してください。
- キーボード名
- 左右
- マイコン
- モジュール
この順番で確認すれば、間違ったファームウェアを書き込む可能性をかなり減らせます。